日本文学 第1回 二葉亭四迷 - 浮雲
明治18年、坪内逍遥という人が、「小説神髄」という文芸論を発表します。
ここから日本の近代文学がスタートします。
彼が提唱したのが写実主義と言われています。
「写実」とは、「人情・風俗を主観を排してありのまま描くこと」です。
それに従って彼が書いた小説が「当世書生気質」ですが、これが全然文学と呼べるものではなかったらしい。
タイトル通り、当時の書生の生活を描いたものでしたが、ただ風俗、人情を淡々と描いただけのものだったそうです。いつか読んでみたい。
実際写実主義を完成させたのが二葉亭四迷という人で、彼は坪内逍遥の「小説神髄」に感銘を受け、弟子入りしたんだそうです。
そして、「小説神髄」の疑問点を彼にぶつけた。
じゃあ疑問点本にまとめて書いてみろってことになり、書いたのが「小説総論」。
その中で彼は、「人情・風俗はただの現象。現象を通してその背後にあるものを描くことこそ文学」と言っています。
そして実際に書いた小説が、この「浮雲」です。
長くなってしまった・・・。
ここから感想です。
あ、ちなみにこの「浮雲」言文一致体で書かれた最初の小説でもあります。
に、しても、読みづらい!!
実際に読んでもらえばわかると思いますが、言文一致とは言うものの、今の話し言葉とはだいぶ違うので、まずそこにかなり苦戦しました。
慣れるの結構時間かかった。先が思いやられます。
簡単に言ってしまえば男の嫉妬の話です。
明治時代からこんなこと考える男がいたのか、と少し微笑ましく思ってしまうくらい。
二葉亭四迷がそういう男だったのかはわかりませんが。
主人公は想い人の一挙手一投足にやきもきし、仕事をクビになってやきもきし、ライバルの出現にまたやきもきし、居候先の叔母になじられてやきもきし、遠方に住む母を思ってやきもきし・・・。
恋を通して色んなことに思い悩む青年が描かれていたように思います。
作中でも、恋がすべての原因だ!みたいなこと言ってます。
恋愛至上主義の走りって感じですかね。
最初と最後のほうでは、文章だいぶ変わっていきます。おしゃれな言い回しがどんどん減っていって、必要なことだけ書いてる感じに。
日本で初めての小説みたいなものですから、書き方に見本があるわけでもなく、どう書いていいか試行錯誤していたのかな、と思ってしまった。
文学に没頭するということ自体に迷いがありもしたらしいです。
まだ文学が市民権を得る前の話ですしね。
それでも最後まで、面白く読めました。恋愛は普遍のテーマですしね。
明治時代から今も変わらず、嫉妬深い男は存在するもので、人間なんて変わらんものだなと思いました。